
ちょうど1年前のブログで奥様を亡くされた同じマンションに住む80代の旦那さま(Yさん)のお話を書きました。
先月ひょんなことからそのYさんからランチにお招きをいただき、お部屋を訪ねました。
明るい日差しが降り注ぐリビングには大きなグランドピアノ、そしてお部屋のそこかしこにある写真の中で奥様は微笑んでいらっしゃいます。
手作りの美味しい食事とワインをいただきながら、たまたま最近見つけたという奥様からYさんへのお手紙の話を聞きました。若い時に病に倒れ、長年闘病生活を送っていた奥様は日常気づいたことやYさんへの思い、感謝をノートに綴っていらしたそうですが、なんとその手紙は20年近くひっそりとソファの下の見つかりそうもないところに入っていたとのこと。たまたま落ちていたのかそれとも奥様がこっそり隠しておいたのかはわかりませんが。。。。
茶目っ気のある奥様だったらしいので後者かもしれませんね。
そこには65歳で定年を迎えるYさんに宛てて「これで毎日あなたと一緒にいられる。それが嬉しくて嬉しくて待ち遠しくてたまりません」と書いてありました。一時、定年を過ぎた亭主は「濡れ落ち葉」なんていうひどい言われ方もされてましたね。。。
流石にそこまでとは言わなくても最近は「なるべく一緒の時間を作らず別々に好きな時間を楽しむのがコツ」なんて喧伝されてますが、お二人の過ごす時間は宝物のようだったそうです。
クリスチャンだったお二人はお互いに神への感謝と共に
「あなたと出会えて本当によかった」
「あなたと結婚できたことは人生の宝」
「毎日の生活は二人の心を養う糧」
「どんな小さなことにも持てる感謝」
「二人でいるときに感じる心の安らぎ」
「与えられた時間を共有し共感できる幸せ」
「あらゆる困難を乗り越えてきたお互いの信頼と絆」
と手紙を交わしていたそうです。

そして今年9月、1周忌でご親族との集まりで朗読したYさんのお手紙を読んでいただきました。
それは『50万回の〇〇ちゃん』。
奥様のことを1日に30回は「〇〇ちゃん」と呼んでいたと思うので1年で1万回、知り合って57年なので50万回は「〇〇ちゃん」と言っていたというもの。呼びかけるたびに優しい声で答えてくれた奥様。「〇〇ちゃん」という言葉は口に出すだけで心が満たされて気持ちが熱くなる「魔法の言葉」だったそう。
亡くなって1年経っても毎日変わらず「〇〇ちゃん」と声を出してしまう、そしていくら呼んでも返事が返ってこない寂しさと悲しみが込み上げてくるそうです。
それでも『天に召される日まであと何回口に出して言うのか、一刻も早く行きたいと思うけれど、残された日々をこんなにも愛するあなたと出会えたことに感謝して歩んでいきたい』という言葉で結ばれていました。
信仰と音楽という共通点と闘病という困難を共に乗り越えて50年以上の歳月を共に過ごしてきたお二人。運命や赤い糸を信じるわけではないけれど、まさに運命としか言いようのない縁があるのですね。。。
純愛という言葉がふさわしいお話でした。


